それでもオフラインのカンファレンスに行く理由

こんにちは、CTOの山岡(@hiro_y)です。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、ここ数年、Webエンジニアリング系の勉強会やカンファレンスがオンラインで開催されることが増えました。

例えば毎年開催されているPHPカンファレンスの場合、2020年12月に開催されたPHPカンファレンス2020は、開催21年目にして初めてのオンライン開催となりました。翌2021年10月に開催されたPHPカンファレンス2021も、同様にオンライン開催となり、YouTube Liveを活用した配信となりました。

オンラインならではのメリットはいくつかあります。まず、移動が必要ない(自宅からでも参加できる)ので時間が有効に使えること。そして日本全国、あるいは世界のどこからでも時間を合わせれば気軽に参加できること、です。

しかし当然、デメリットもあります。いわゆる「カンファレンスの廊下」問題です。勉強会やカンファレンスは、もちろん発表を見たり聞いたりして学びを深める場です。しかし機能はそれだけではありません。実際にいろいろな人と会って話をし、コミュニケーションを交わすことでお互いに知見を得たり、刺激を得られることも大きな効用なのでした。

オフラインでの勉強会やカンファレンスに行くと、会場の外の廊下やスペースでいろいろな人と出会えます(懇親会でもそうですね)。知り合い同士の場合もありますし、発表をしていた人に自分の疑問・質問を話しかけることだってできるわけです。自然発生的に起こるそのようなインフォーマルな議論の機会は、とても貴重なものだと今となっては思います。

もちろん、オンラインでの開催の場合でもTwitterやDiscordのようなツールを通してそのような機会をできるだけ増やす努力はなされています。しかしそこで、偶発的な出会いやコミュニケーションを増やしていくのはなかなか難しいと言わざるを得ません。

リモートワーク(テレワーク)でも同じことが言えますが、オンラインで何かしらの機能を代替したり目的を叶えることは容易です。実際、勉強会やカンファレンスも主要な目的は申し分なく達せられています。ただ、先ほど述べたようなオフラインならではの偶発性、あるいはセレンディピティを起こせるようにするには困難が伴います(もしかしたらXR等技術の力で何とかなるのかもしれませんが、今のところ過渡期です)。

生身の人間がそこにいる、という情報量にオンラインはまだまだ遠く及びません。画面越しに話すことで得られる情報量は、実際に会うことで得られる情報量と格段の差があります。

そのような状況の中で、今年(2022年)に入ってからコロナ禍との距離の取り方にも一定の改善がなされ、オンラインとオフラインの融合の試みが始まっています。2022年4月には、PHPerKaigi 2022がオンラインとオフラインのハイブリッド形式で開催されました(オフラインはあくまで「パブリックビューイング」という扱い)。

PHPerKaigi 2022では自分もパブリックビューイング会場に足を運んだのですが、この2年間会えていなかった知り合いのエンジニアたちと久しぶりに会うことができ、エンジニアリングの話や仕事の話など、いろいろな話(議論)をすることができました。そこから得られたものはとても大きく、やはりオフラインにはオフラインのよさがあると実感。他にも同じような感想を持たれた方が多かったようです。

この先新型コロナウイルスの感染状況がどうなるかわかりません。しかしそのような中でも、適切な対策を取った上でのオフラインでの取り組みは少しずつ始まっています。これは別にオンラインをなくす、という話ではありません。それぞれによい部分があるわけなので、適切に使い分け、共存できる方法がこれから探られていくのではないでしょうか。

日本のPHPコミュニティでは、カンファレンスが東京だけでなく、北海道、仙台、関西、福岡、沖縄などあちこちの地方で開催されてきました。コロナ禍にともない中止を余儀なくされる状況が続いていますが、またいろいろなところで勉強会やカンファレンスが開催され、いろいろな人と実際に出会えるようになるとよいなと思います。

何より、まだ経験の少ないエンジニアたちがそのような場で何かしらのヒントを得られる環境を復活させてあげられたらと思います。自分もまた、そうした場で刺激をもらって今までやって来たわけなので。そうした世代間の橋渡しのようなこともまたできたらいいと思うのです。